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DATE: CATEGORY:山下達郎サンデーソングブック 
山下達郎さん サンデーソングブック 2009年7月5日「モータウン特集・アーカイブス第3回目」

さっそく、永久保存版としてテキストにしてみました。
誤字脱字はご容赦のほどを。 いやー、勉強になります。

*******************************


7月に入りまして、あっという間ですが、東京は雨、雨で梅雨らしい天気ですが全国的には空梅雨のところも多いそうです。大阪では逆に空梅雨でビヤガーデンンが大繁盛しているとニュースを見ましたけれども。

雨の少ないところは大変ですが、雨がまた多すぎますと、うちなんか加湿器があまりの湿度の高さにヘタりまして、新しいのを1個導入したりしまして。
そんなことはどうでもよいのですが。

私、ニューシングルめでたくマスタリング終了いたしまして、昨日無事に工場へ送られて、実に8カ月、ツアーの間のレコーディング、8か月休みなしで働いてまいりました。
ようやく、先のスケジュールがない、一段落することになりましたが、そうなりますと、今度は溜まりに溜まった領収書の整理ですとか、うちの仕事場の、サンソンで引っ張り出してきたCDを元の棚に戻すとか、この8ヶ月間の山を、なんてったって、今年は正月に掃除すらできませんでしたので。

基本的にはちっとも休みにも何もならないのですが、精神的にはかなり、仕事やってるときは風邪をひいたらどうしようとか、健康管理に気を付けましたので、少し来週あたりはアルコールを、少しやってみたいと思いますが。

ニューシングル、詳細が決定いたしました。
8月19日に発売でございます。
今回は何度も申し上げておりますが、8月1日公開のアニメ、劇場アニメでございますが、「サマーウォーズ」。
細田守さんの素晴らしいアニメーションでございます。是非劇場でご覧になっていただきたいと思いますが。

このアニメ映画「サマーウォーズ」のテーマソング、エンディングテーマでございますが、これを私、今回担当しておりまして8月19日にシングルカットでリリースいたします。
「僕らの夏の夢」という作品でございます。

久しぶりにシングルで生ドラムといいましょうか、リズムセクションでやりました。
今回、私のライブやっております、今回参加することになりました小笠原拓海の生ドラムで久しぶりにシングルが生リズムセクションで展開する、ということでございます。

カップリングが、今回3曲入りでありまして、「ミューズ」、今TBS系のテレビで全国ネットでやっております「総力報道 ザ ニュース」これのテーマソング、4月からずっと始まっておりますが、これも最新曲であります。

これにですね、手塚治虫さんの生誕80周年で、NHKのBSで週間手塚治虫という番組をずっとやっておりますが、そのテーマソングとして私の「アトムの子」が流れております。

もともとは1991年の作品でございますが、今回はツアーでもライブでもやりましたので、ライブバージョンを入れました。「アトムの子」のライブバージョン、この3曲で8月19日発売のニューシングル、やってまいります。

オンエアは2週間くらい先になると思いますがオンエアできるようになりましたら、みなさんに聴いていただきたいと思います。とりあえず8月19日ニューシングル発売決定でございます。宜しくお願い申し上げます。
また今週から毎週告知をさせていただきますが。

さて番組の方はモータウン特集アーカイブ、今から13年前にやりました特集の再現番組であります。
2週間、先週、先々週とお届けしてまいりましたが、今週第3週目でございます。
パート3と題しまして、今回はモータウンの音楽性を分析するという、ちょっと変わったテーマでございます。


モータウン以外の曲を使って、そしてモータウンの音楽的特徴を色々とお聴きをいただこうというパート3でございます。今日はちょっと角度が違いますけど、逆にとっても面白いプログラムになるのではないかと思っております。
今日はちょっとひねったモータウンサウンドの特集でございます。

(CM)


モータウン特集アーカイブ、4週間お届しておりますが、先週、先々週は1960年代のモータウンヒストリーでございました。3週目の今日はモータウンの音楽性といったものについて、いろいろと申し上げたいと思います。

モータウンの音楽的特徴、モータウンとはいったい何なのか。
またさらに音楽的影響力とか、いったことについてもいろいろとお話しさせていただきたいと思います。

今日はモータウンの本家の曲というのは1曲もかかりません。
全てモータウン以外で制作されたものばかりであります。
60年代のモータウンというのは商業的にも音楽的にも大成功を収めた、文字通り一世を風靡いたしました。

そうしますと、モータウンの作った音に影響を受けた作品というのが続々と登場して参ります。
あるものは本当に音楽的な敬意を込めて、ああいう音楽を自分もやってみたい、純粋派ですね。
あるものは商業的な意図、オレもああいうのを真似てみたい、ひと儲けしてみようというですね、便乗派。
あるものは真似。あるものはパクリ。あるものは本当のオマージュという、色々なタイプがありますが。

いずれにせよ、その結果作り出されものが、モータウン・クローンというべき作品を色々とお聴きいただくことで、モータウンの音楽的特徴というのが更にあらわになるという。
その前に今日はラジオをお聴きの皆さんにモータウンの音楽的特質を具体的に知っていただくために、うちで音素材というのを色々と作ってまいりましたので、まずはそっちの方からお聴きをいただこうと思います。

最初にこの音をどうぞ。

(Dr)

まずはモータウンの音楽を特徴だてる一番目のビート。
これはドラムのリズムパターンでございますが、これにべーすがのります。

(Dr.+Ba)

このようなパターンであります。
さらにこれに和音がのりますと、どういうことになりますかというと、

(Dr.+Ba+Piano)

こんなような感じでございます。
これをまず最初に頭に入れておいて頂きたいと思います。

これが60年代中期のモータウンの代表的なリズムパターンであります。
これに興味を持った人たちが”オレモああいううパターン使ってやってみよう”と続々と出てくるわけであります。特にモータウンの全盛期というのは先週も申し上げましたようにアイドル歌謡でございましたので、当時のアイドル歌謡の中心的な場所でありましたイーストコースト、ニューヨークとかフィラデルフィアとか、このあたりの作曲家とかプロデューサーという、人達が続々とモータウンの真似を始めます。

アイドル歌謡ですからヒットパターンを踏襲するというのは当然のことで、青の曲調がヒットするんだったら俺たちも早速やってみようという感じでございますが、そんな中から代表的な何曲かを今日はお聴きをいただきたいと思います。

モータウンサウンドに影響を受けて意識的に後追いをしていった作曲家たちというのは結構おりますけれども、そんな中でもサンディ・リンザー(Sandy Linzer)とデニー・ランデル(Denny Randell)、リンザー・ランデルという作曲家のコンビがおりました。

この人たちが手がけました黒人3人組のガールグループ、トーイズ。
このトーイズというグループが1965年、おりしもシュプリームスがNo.1ヒットを連続して出していたその真っ最中、1965年の秋口に全米2位まで上がるラバーズコンチェルトという大変有名な曲、これをまず。

これもリンザー・ランデルの作品でありますけれども、フォー・シーズンズのヒット曲、1966年の中ごろに全米9位まであがりました。Working My Way Back To You。これはボブ・クルーのプロデュースであります。
後にスピナーズのカバーでも有名でございますが。

そして1965年のこれも秋口のヒットでありますが、フィラデルフィアのシンガー「レン・バリー」の、デビューヒットであります。
これも大ヒットソングでございますけれども「ワン・ツー・スリー」。
この3曲を、先ほど私がドラムマシンで演奏したパターンをちょっと思い出していただきながら3曲続けてお聴きをいただきたいと思います。


14:10 A Lover's Concerto/The Toys
14:12 Working My Way Back To You/The 4 Seasons
14:13 1-2-3/Len Barry


いかがでしたでしょうか。
1曲目は「ザ・トーイズ」で「ラバーズ・コンチェルト」。これがデトロイトで録音されたというのが気がつかないほどのモータウンサウンドでございますけれども、トーイズの65年のヒットシング。バッハのメロディーを借用した「ラバーズ・コンチェルト」。

2曲目はフォー・シーズンズ。フォー・シーズンズの中期のヒットソングには、」こういったモータウンの音作りに影響を受けたものが大変多いんですけれども、これもそうしたうちの一曲、「ワーキング・マイ・ウェイ・バック・トゥ・ユー」。

そしてレン・バリー。これは”マダラ・ホワイト”というジョニー・マダラとデビット・ホワイトというフィラデルフィアのプロデューサー、ソングライターチームでございますけれども、もともとはドゥーワップグループ、ダニー&ザ・ジュニアスのメンバーでございましたが、この人たちが作曲した曲でございます。
これも非常にモータウン色のはっきりしたダンシング・イン・ザ・ストリートを彷彿させるパターンでございます。
レン・バリー、1965年のヒット曲「ワン・ツー・スリー」。でも録音はモータウン本家よりこっちの方が優れていたりしますけれども。

こうしたニューヨーク、フィラデルフィアのソングライターチーム、プロデューサー、そうした人たちは、こうしたモータウンの真似といいますでしょうか、そういうことを行っているのですけれども、それでも少しずつ彼ら自身の個性といいますでしょうか、イーストコーストらしい音色が出ているのがおもしろい。
ちょっとだけ、さらってみました。

さて、イギリスに目を転じますと、先週、先々週お聴きをいただきましてお分りの通り、例えばビートルズのプリーズ・ミスター・ポストマン、ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー、そういうようなモロ、モータウンファンというのが、イギリスのビートグループにはたくさんおりました。

影響も何も、直接的なカバーはたくさんありますので、アメリカの場合よりもイギリスの人たちの方が、ほんとに好きでカバーしているという、あんまり営業臭さが無いというですね。

私もそういうイギリスのロックバンドが歌うモータウンのカバーを色々聴いて育ってきましたけれども、その中でもとりわけいい出来だと思うヤツを今日は1曲だけお聴きをいただきたいと思います。

イギリスの4人組のボーカルインスツルメンタルグループ、”ザ・トレメローズ”。
ザ・サイレンス・イズ・ゴールデンのヒットで有名ですが、このトレメローズ、1968年、アメリカで発売されたアルバムのみに収められております。

アルバム「サドンリー・ユ・ラブ・ミー」に入っておりますフォートップスのヒットソング、リーチアウト アイルビー ゼアのカバーです。

14:17 Reach Out I'll Be There/The Tremeloes

私が高校生のころにはダンパ、ダンパなんていうのは今は死語ですが、ダンスパーティー、略してダンパ。
文化祭のダンスパーティー、レコード掛けてダンスするようなそういう集まりに
、このトレメローズのレコード持っていて掛けますと、えらいよろこばれたのを記憶しております。
 
トレメローズ、1968年、アメリカでのみ発売されたトラックであります。
アルバム「サドンリー・ユ・ラブ・ミー」からフォートップのカバー、、リーチアウト アイルビー ゼアのカバーでございました。

今のリズムパターンなんかもモータウンの典型的なものでありまして、先ほどの、このパターンの応用でございます(Drマシンのリズム)。
さっきのは、ルーズなやつですけれども、これを少しホップさせると今のパターンになります。

昔からヒットソング、大衆音楽というようなものは有名歌手、スター歌手、まず第一に誰がそれを歌っていいるのかという、スター第一主義とでも申しましょうか、全ての栄誉は作品の象徴としてのシンガーが独占するという形だったんですけれども、モータウンを始めとしてこの60年代中期あたりからですねヒット曲を形成しているほかの要素、作曲家、プロデューサー、演奏している人間、さらにオーディオ技術、ラジオの音質とか録音技術の向上に伴いましてですね、ラジオから出た音が凄くいい音だと、それさえもヒットのポテンシャルになりうるという。

そうした色々な要素が加わっていった、いわば総力戦としてのヒットソング。詩と曲と歌手、だけではない、アレンジ、演奏、例えばドラムのフィルとか、ベースのフレーズ、エコー感、そういうものまで含めた総力戦としてのヒットソングの時代の本格的な幕開けというですね。

モータウンやフィルスペクターのフィレス、もちろんビートルズもそうですが、今も歴史に名をとどめているサウンドというのは、この時代に生まれた音づくりの新しい要素、そういうのを巧みに運用していったという。

よく、フィルスペクターのレコードがモータウンに与えた影響なんていうことを言われますけれども、誰が誰に一方的に影響を与えたのは無いんです。
お互いがお互いを見つめながら、気にしながら、ライバル心燃やしながら切磋琢磨して発展していったという。

今聴きますと、例えばフィルスペクターとモータウンでも、たがいに何か行ったり来たりという関係が非常に見てとれます。どちらも一流のミュージシャン、一流のアレンジャー、一流の曲、そして一流のシンガーという。
そういうような火花を散らして、というかそういうような時代でありました。

さて、そんな時代に作られてヒットしていた60年代中期のモータウンのテイストというものをですね
ミュージシャンやプロデューサー達が自分たちの作品に導入・反映していくという現象がたくさん起こるわけですが、そんな中で1970年、イギリスで作られた1枚のレコードがあります。

発売された途端にグングン、ヒットチャート上がっていってミリオンセラーになります。
この曲はモータウンがどうしてヒットしたのか、モータウンの音楽が持つヒットポテンシャルが何なのか、そうしたことを理詰めに音楽的にどういう特徴、どういう詩、そういう演奏、どういう歌、そういうような事をですね、そうした音楽的に研究、分析して作られたレコードといわれております。

それが目論見どおりに見事に大ヒットとなったという有名な1曲をお聴きをいただきましょう。
1970年、エディソン・ライトハウスというグループのLove Grows 、邦題「愛の炎」。

14:22 Love Grows (Where My Rosemary Goes)/Edison Lighthouse


このエディソン・ライトハウスというグループは、グループ名はありますが無い時はスタジオミュージシャンによる幽霊グループです。歌っているのはトニー・バロー、イギリスのセッションボーカリスト、ホワイトプレーン、ファーストクラス、いろんなとこで声が聴けます。

曲を書いておりますのが、トニー・マコウレイ、バリー・メイソン、トニー・マコーレはブリティッシュロック界では一二を争うメロディーメーカーです。そのうち、トニー・マコウレイの特集をやってみたいと思いつつなかなか実現できません。

もう一人バリー・メイソンのほうもトムジョーンズとかエンゲルベルト・フンパーディンクのヒット曲で有名な作家です。こういう人たちが作りました1970年にリリースされた曲でありますが、英米、そして日本でも見事大ヒットとなりました。
モータウン作品のもつヒットの要素を色々と研究して作られたものと言われております。


さて、さきほどモータウンを代表するパターンというのをお聴き頂きましたがモータウンビートの典型というのは実はもう一個あります。

(Dr+Ba)

”これ、どっかで聴いたことあるな”とおっしゃる方たくさんいらっしゃると思います。
事実、このビートを使ったヒット曲というのはたくさんございます。
これも我々はモータウンビートと呼んでおります。
このビートが出てくると、”ああモータウンだなっ”て感じがするそういう典型的なリズムパターンであります。

このパターンで作られた代表的な作品を1曲。
80年代にこのパターンで作品が作られたというのは、歌っている人たちがモータウンで育ったという証明でもございましたけれども、これは1982年の全米ナンバーワン。
ダリル・ホール&ジョン・オーツ、マンイーター。

もう1曲。これはもう最近の曲ですが、さすがに21っ世紀に入りますとですね、以前ほど多くは無くなりましたけれども、それでもモータウンビートを盛るという作品は今もしっかり存在しております。
エイミーワインハウス、2007年のアルバムからアルバムのタイトルソングともなっております「Back To Black」

ホール&オーツ、マンイーター。そしてエイミーワインハウス、バック トゥ ブラック。2曲続けてお聞き頂きましょう。

14:26 Maneater/Daryl Hall & John Oates
14:28 Back To Black/Amy Winehouse

というわけで、どちらも明らかにモータウン風にやろうという意図で作られた曲であります。
まずは、ダリル・ホール&ジョン・オーツ、1982年の大ヒットソング、マンイーター。
そして、シュプリームスの匂いプンプンの危ないシュプリームスって感じがしますけれども、エイミーワインハウス、バック トゥ ブラック、2007年のアルバムのタイトルソング。
プロデューサーのマーク・ロンホンとの共作であります。

こうした20代、30代のミュージシャンたちにとってモータウンビートっていうのはどのように解釈されているでしょうかね。2002年の映画「永遠のモータウン」あたりから結構啓発されているのかもしれませんが。

前半はそうしたものの洋楽編でございました。
お知らせを挟みまして、後半は邦楽で攻めてみたいと思います。

(CM)

冒頭でも申し上げました8月19日山下達郎ニューシングル「僕らの夏の夢」「ミューズ」そして「アトムの子」という3曲入りのシングルでございます。
音が解禁になり次第、この番組でお聴きをいただきます。
今はまだ発売日の告知のみという感じでございますが。

というわけでモータウン特集アーカイブス、続けたいと思いますが。
もともと、この特集、最初にオンエアしました13年前というのはですね、ちょうど小室哲哉さんを中心とした一大小室ブームの真っただ中でございました。

モータウンサウンドというのは本当にアメリカの60年代中期に一世を風靡した社会現象にまでなった大ブームでありました。それがちょうどですね、90年代の当時の小室君のブームとは、そのちょっと前のビーズのブームとか質的にはそういうものとと大変似ております。

従いまして自分のオリジナリティーを大事にするミュージシャンでしたら、そんな風に世の中を席巻しているスタイルを真似をしたいとは思わないわけで。

例えば小室君の全盛期に、”僕も小室君みたいな音楽やってみたい”なんて思うのはですね、ミュージシャンにはほとんどいなくて、例えば商売がかった、例えば広告代理店とかそういう部分であります。
従ってアメリカでのモータウンの全盛期にサウンドや曲調を模倣しようと思った人たちは、今日の番組の最初にかかったようなイーストコーストのアイドル歌謡に関わっている作曲家、プロデューサー、そしてチームでありました。

もう少し音楽的な知識のある人たちはモータウンというものに対しては当然ながら一定の距離を保っていたということができるでしょう。

そうした風俗的な部分とは違った受け止め方をされていたイギリスがモータウン風をあおるというのは、当然と言えば当然と言えるわけであります。

さて、ひるがえって日本の場合はどうかといいますと、実は日本の場合はモータウン関係のレコードリリースというもの自体が、当時はリアルタイムでは全く不十分な状態でありあました。
従って、ブームはおろか、ほんの一部のヒットソングしか知られておらず、しかもそれが数年遅れて、という、そういう時代が凄く長く続きました。

音楽的影響もへったくれもありません。
ですから、後の英米のモータウン再評価がですね日本では何のことか判らなかったのも当然のことで。
しかたがないので、あたかも日本でも英米同様の部分があったかのように、つくろわざるを得ないという。

いかんせん、モータウンがきちんと紹介されて、聴かれてきた歴史などというのが日本にはなかったんですから、どうしようもありません。

結果、今、私が述べてきたモータウンビートというようなものが、日本の作曲、編曲に取り入られる場合はもうごくごく表層的な、つまりはファッションですね、そういったものとならざるを得ませんでした。

そういうファッションとしての取り入れ方というのは、一番お手軽にやるのは、いずこも同じアイドル歌謡の世界でありますので、その多くはとても鑑賞に耐えるものとはいえません。
それでも、そんな中に音楽的に成立した作品、もちろんございます。

そんな中から、今日はいくつかお聴きいただきたいと思います。

まずは、そうした数あるアイドル歌謡の中から、1983年の松田聖子さんのユートピアというアルバムに入っています「ハートをRock」という、これは甲斐よしひろさんの曲でありますが、まさに典型的なモータウンビートで作られた1曲でございます。

続きまして桑田佳祐さん、1987年のシングル、ソロデビューシングルですね、「悲しい気持ち」。
これもそうしたモータウンビートの1曲でございます。

松田聖子さん「ハートをRock」、桑田佳祐さん「悲しい気持ち」、2曲続けてどうぞ。

14:36ハートをRock/松田聖子
14:38悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)/桑田佳祐


ということで、典型的なモータウンビートで作られた日本の作品の中から、
松田聖子さん「ハートをRock」、80年代の日本で、はたしてこれがモータウンということに対してですね、どれくらいの自意識をもってやってるかは判りませんけれども、でも、これは、もろモータウンビートですのでおかけしてみました。

そして、桑田佳祐さんの87年「悲しい気持ち」、2曲続けてお聴きをいただきました。

もういくつか聴いてみましょう。
続きましては1997年、広末涼子さんのデビュー作、竹内まりや作詞作曲になります「MajiでKoiする5秒前」。

90年代に入りましてサンプリングという技法、オリジナルの音源を直接使用してですねサウンドコラージュという形で自分の表現に取り込むという新たな製作手法が主流となって参ります。
モータウンの音源も人気の音ネタといった形で、さまざまな場所で使われて参りました。

日本で最近話題になりましたのは何と言っても安室奈美恵さんの昨年出されましたシングル「NEW LOOK」でありましょう。シュープリームスのベイビーラブのサンプリングが使われております。

というわけで、広末涼子さん「MajiでKoiする5秒前」、安室奈美恵さんの「NEW LOOK」。
2曲続けてどうぞ。

14:40 MajiでKoiする5秒前/広末涼子
14:42 NEW LOOK/安室奈美恵

広末涼子さん1997年の「MajiでKoiする5秒前」、安室奈美恵さんの「NEW LOOK」でございました。

そんなわけで、今日はモータウンの音楽的特徴、後世の影響力というようなテーマでモータウン以外の作品を使ってモータウンを見つめてみようという、如何にモータウンの音楽というものが、今なお世の中に意識的、そして無意識的に浸透しているかという証明でございますけれども。

それはとりもなおさず、私が中ほどで申し上げました、60年代中期という時代の特色、レコード制作というのが技術的にも音楽的にも革命的に進歩した時代の、そうした影響力という具合に置き換えても構わないと思っております。

さて、人の作品をあげつらいましてですね、誰の影響だとか何とか、そういうことを一方的に申し上げるのはフェアではないので、最後は私自身の作品で締めくくりたいと思います。

今日はずーっとモータウンの音楽的特徴っていうのをリズムの面からご説明して参りましたけれども、ホーランド・ドジャー・ホーランドのチームが大変によく使うコード進行でもありましてですね、モータウンコードなんて一頃私たちは言っておりましたが、例えば今の安室奈美恵さんのベイビーラブという曲でもですね、

♪ベービィー ラーブ ベービィー ラーブ・・・・(達郎氏、エレピ伴奏で)

という、こういう響きが出てくると、もうモータウンだなという感じがいたします。

こういう感じ、これも当時のニューヨークあたりの作曲家チームの人たちというのが、たまーに使って曲を作ったものでありましたけれども、私、こういうようなコード進行、あるいはモータウンビートというのが何曲かありますが、私の場合にはですねモータウン的なものをやりたいというよりは、そういったニューヨークやフィラデルフィアあたりの作家みたいな曲を書きたくて、結局今それを聴いてみるとモータウン風という感じになっている、非常に屈折した、山下達郎的フィルターがかかったと申しましょうか、そういうアプローチなんですが。

そういうフィルターを通っているとはいえ、モータウンの香りがします。
私の曲を今日は最後にお聴きをいただきたいと思います。

来週はいよいよモータウン特集アーカイブス最終回。
マイ・フェバリット・モータウン、私の好きなモータウンの作品をいろいろとお楽しみいただきたいと思います。
モータウン特集の締めであります。

来週もプレゼント特集はいたしますが、「マービンゲイ物語」そして、CD「モータウンゴールド」二つのプレゼントをふるってお申し込みください。

さて、今日の最後は山下達郎1991年のアルバム、アルチザンに入っております「Mighty Smile」

14:46 Mighty Smile(魔法の微笑み)/山下達郎










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